先進各国と日本の保険加入の違い

2015年に相続税法が改正されたことで納税者が大幅に増えたにもかかわらず、多くの納税者が 合理的に節税することができずに、相続税を余分に納めている実態がある。

その背景として、納税者が相続税のしくみを理解していないことと、保険会社が「生命保険を活用した 相続対策」に関して、実効性のある保険プランを提案できないことがある。

そのことを解りやすく説明すると「生命保険を活用した相続対策」を行うにあたっては、相続が、いつ起こ るか予測できないために、保険期間に終わりのない「終身保険」を活用しなければならないのですが、保 険会社が長年にわたって販売に力を注いできたのは「定期保険」であるために、殆どの保険契約が、相続 が起きたときに活用できないものになっているのだ。

そのことを、さらに解りやすく説明すると、個人契約における「定期保険」の保険期間は、一般的に「60歳~70歳」であるために保険期間内に死亡する割合は僅かにすぎず、殆どの加入者は、定期保険 の保険期間が終了した時点では生存していて、実際に死亡して相続が起きるのは、定期保険の保険期 間が終了したあと15年~20年が経過して「平均寿命」を迎えた頃であるために、相続が起きたときに 活用することができないのだ。

企業が加入している定期保険は、保険会社が「経営者保険」と称して販売を推進したために全国で多くの企業が加入しているが、それが問題なのは、経営者が現役を引退する際に退職金の財源として、 定期保険の解約金を当てることを前提に(推奨)していることだ。

経営者の退職金に当てるために定期保険を解約した場合、その時点で保障が失われるために、その後、必ず起こる相続のときに活用することができないのだ。

そのことの事実関係が、代理店や営業担当者が契約者に手渡した保険設計書に記載されているにもかかわらず、そのことが「相続対策につながらない」ことを意味することを理解できる企業経営者が一人もいないのだ。問題は、それだけではなく、経営者保険を勧めた保険代理店や営業担当者が、自分が勧 めた経営者保険が「相続対策に活用できない」ことを全く理解していないのだ。

そのことを捉えて「加入者の落ち度」とするのは明らかな誤りです。その理由は、必要な相続対策を行うことができずに余分な相続税を納めることになることを理解できない代理店や営業マンが、加入者にとって、将来の相続対策に活用できる有効な保険プランを提案することができないことが問題であり、そのことが 問われるべきだからである。

上記のことが正しく理解されるために、以下の客観的データをご覧ください。


上記のデータは、現在のライフネット生命の代表取締役社長(当時副社長)の岩瀬大輔氏が2009 年に客観的データに基いて著した「生命保険のカラクリ」に掲載されたものだ。データとしては少し古いが(数値は大きく変わっていないので)見るべきところは、そこではなく、日本の保険加入の実態が先 進各国と比べて大きくかけ離れたものであることを理解することである。

ここに示された保険会社の収益率は、会社を運営するために必要なコストを差し引いた純利益であるために、世界第2位ドイツの3.0%や、世界第3位アメリカの2.7%でも十分な利益ですが、日本の保険 会社の収益率は世界第1位であるだけでなく、世界第2位ドイツの収益率3.0%を3倍近く引き離して8.9%であることがわかりる。

日本の保険市場だけが、なぜ、これほど大きな収益を得ることが可能なのか、その原因を「生命保険のカラクリ」が明らかにしているのだ。同書は保険会社による収益率の「」は、以下に示された平均加入保険金の「差」であることを言い当てている。




上記の資料から1人あたりの平均加入保険金をわかりやすいように1ドル=100円で換算するとドイツが200万円、イギリスが260万円、アメリカが580万円で、日本の1600万円は世界第1位で、世界第2位のアメリカの2.7倍であることがわかりる。

ここに示されたデータが、日本の保険市場(日本で営業する保険会社)が不当に高い収益を得ることを可能にしているカラクリである。その役割を担っているのが「定期保険」であり、定期保険を販売するように教育指導された代理店営業マンなのだ。

日本を除く先進各国は、万一の場合に備えるための「死亡保険」よりも、老後の生活に備えるための 「年金保険」や「終身保険」に加入している割合が多いために、それらの保険は貯蓄性が高い上に将来、 加入者に還元されるために、日本の保険会社のように、ひたすら「定期保険」=(保険期間の最後まで 加入者が生存していた場合、払込んだ保険料が全額没収される保険)を販売して高い収益を得るよう なことをしていないために、先進各国と日本の保険会社の収益率の「」が、これほど大きなものになっているのだ。

日本の保険加入の実態が、先進各国と比べて、これほど大きくかけ離れていることを日本の加入者は、どのように思うだろうか。

上記のことを解りやすく説明すると3000万円の保障を受けるために30 年間にわたって1000万円の保険料を払って、万一のことがなかった場合に「すべて掛け捨て」になる保険と、1000 万円の保障を受け るために30年間にわたって1000万円の保険料を払って払い終わったときに「解約金」が1000 万円ある保険と「どちらが良いか」ということだ。

前者が「定期保険」で後者が「終身保険」である。このように説明すれば誰でも理解できると思うが、このような説明を受けたことがないという加入者が多いのではないだろうか。

問題は、それだけで終わらずに、相続にまで関わるのだ。それは、個人契約でも、法人契約でも同じで、定期保険の「保険期間が終了する時点」では、殆んどの加入者は生存しているために、その後に起こる「相続」のときに定期保険では全く役に立たないのだ。

そのために、保険金受取に関する「非課税枠」を活用することができないために相続税が軽減されない だけでなく、それ以上に「損をする」のは、被相続人が亡くなったことで支払われるべき保険金がないことだ。そのために、元もとある財産の外から保険金という新たな財産がもたらされることがないために「財産が増えない」ことが大きな損失なのだ。

参考のために、経営者保険として50歳の経営者(男性)が70歳で現域を引退する前提で「1 億円の定期保険(平準定期保険)」に加入した場合と「7,000 万円の終身保険(低解約金型終身 保険)」に加入した場合とで、どのくらい違うかというと、相続人が3人(配偶者と子ども2人)で課税 財産が1億円の場合で計算すると、相続税を納めた後の実質手取り財産が、定期保険よりも終身保険のほうが、2,143 万円多くなる。つまり、定期保険に加入した場合は終身保険に加入した場合と比べて2,143 万円の財産を失って損をすることになるのだ。

上記と同じ前提条件で「逓増定期保険1億円」と「低解約金型終身保険1億円」で比較した場合、相続税を納めたあとの実質手取り財産の「」が、逓増定期保険よりも低解約金型終身保険のほうが4,236 万円多くなるのだ。

※上記の差額は、法人契約による保険料を損金計上した分に対する実効税率(法人税の軽減効果) を考慮した上での差額ですので実質的な財産の差である。

上記のように「定期保険」に加入したことで損をすることが理解できたならば、それは、加入者が自分で招いたものではなく保険会社(代理店や営業マン)から提案された保険プランを受け入れた結果、損をすることを正しく理解することが大事なのだ。

ここまで説明しても理解できない人のために、さらに、解りやすく説明すると、終身保険であれば、保険料を払い終わった後(どれほど長生きしても)いずれ亡くなって「相続」が起きるために、そのときに100%の確率で死亡保険金が支払われるために、終身保険であれば、何もしないで、そのままの状態にしておくだけで「相続対策」につながる(活用できる)のだ。それに対して、定期保険の場合は、相続が起きる前に「保険期間が終わってしまう」ために相続対策につながらない(活用することができない)のだ。

ここまで説明しても「まだ、理解できない」という人がいないことを願いたい。

上記で説明したように、生命保険に加入する際は、将来の「相続」までを視野に入れる必要があるにも関わらず、そのことを保険会社も代理店も、定期保険を売ることに終始するあまり、そのことを全く理解していないために、加入者にとって将来の財産につながる「有利な保険」を提案してもらうことができないのだ。

その点について、法人企業が保険会社から勧められて加入している定期保険を活用した「経営者保険」が、管理人が推奨する「保険プラン」と比べて、どれほどの「大きな財産を失う」ことになるか、管理人が書いた本「週刊ダイヤモンドに掲載されなかった『経営者保険のカラクリ』」に多くの事例を掲載して詳しく解説しているので、手遅れにならないうちに、是非、お読みいただくことをお勧めしたい。